カタヨリ紙

終電前のブンガク雑談サイト 

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『腹中花』 桑井朋子

あれから二十年余がたった。私はいっとき嫉妬に狂い、その婆さんを殺したり醜いトカゲの姿に変えたりするという妄想を描くことで、辛うじて日常の生活を保っていた。その日常も男と別れてからは以前のように汚れのない生活に戻り、心置きなく娘とも会えた。けれどもその汚れのない二十年はなんてつまらなかったことだろう。彼との二年三ヶ月と比べれば、月とスッポンだ。とりわけ、この世にもうこの自分を殺してくれる者がいないのだと、ふとそう思うときの虚しさは言葉に言いつくせない。
人はどうなのか知らないが、私はたえず自分の死が納得のいく形に保証されていないとどうしても落ち着けない。でなければ、現実のどんな希望も幸福もただの幻のようでしかない。(156p)

※『文学界4月号』/『腹中花』桑井朋子

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