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ゾラ 『ナナ』

ゾラ『居酒屋』(過去記事)につづいて『ナナ』を読了。じっくりと、読みましたよ、登場人物も多いですし、読みながら、ゾラはここで、どういう効果を狙っているのかとか、なぜABC…という順序で物語るのかとか、行きつ戻りつしながら、けれども無欲な読者のごとくに素になって楽しみもしました。どうせ素人のおばちゃんの感想文ですから(笑)いつものように、自分勝手に書かせていただきます。


その前に(←はやくも脱線!)『居酒屋』、べつの訳者の方の文も読みました。一度に別々の訳者のものを2回読んだことになります。集英社世界文学全集55『ゾラ』のほうが私は好きですね、なめらかで、ジャルヴェーズのセリフが、話のスジと合っているようにも思うし。今回の『ナナ』は、川口篤さんと古賀照一さんの手によるものですが、古賀さんは『居酒屋』のほうも訳されています。どうも女性が勝気な印象で…(笑)やはり原文から自分でおこしていくという態度がよろしいかと。これは、フランス語?(凹)日本語ですらもアヤシイ私なので、早々に諦めて、本題に入らせていただきます。。。。


まず、ゾラの凄いところ。
これは小説ですが、読みながら、頭のなかで、豪華絢爛な映画を観ているような錯覚に陥る。ことに『ナナ』はそうです。カット割りが優れていて、このまま映画の脚本に使えそうなくらいに完成度が高いです。ただし、最初の出だしが重過ぎて、話がなかなか前に進まないので、この先の展開とどう絡んでくるのかと、いちいち紙に書き留めてしまいましたが、それほど重要ではないような気がしました。というのも、現代人の私が現代に訴えるとしたら? という視点で据えなおしたからでした。読みながら、刺激されて、頭が勝手にプロットを立ててしまう。これを軸にこう表現したいと、情熱が沸き上ってくる。それほどにゾラの書くものは、読むものを巻き込んでゆきます。しかしあんまりにも偏った記事を書くのもなンなので、少しはマトモにご紹介すると、
「豪奢を極めた高等娼婦の生活の中に、第二帝政時代(参考)におけるフランスの腐敗面を描いたゾラ最大の傑作」と、作品紹介には書かれていました。これはルーゴン=マカール叢書の副題に沿っているようです。「第二帝政下に於ける一家族の自然的・社会的歴史」というのがそれです。んー、ちょっと字面がカタイような…、ひと言で言ってしまえば、居酒屋ジェルヴェーズの娘ナナが、美しく成長して奔放に生きていくさまを描いた小説、というところでしょうか。(こちらのサイト様 が詳しいです)
たしかに、ゾラの生きていた時代は、1840~1902ということで、その時代の空気を濃いめに出そうとすれば、この話の出だしは尤もなのです。いかにも胡散臭いカンジがしますよね。そしてこの偉大な作家をきちんと論じている方々は、ネット上では多数見受けられました。近所の本屋には、ゾラなんて置いてないのだけれども(笑)さすがはネットです、勉強になります。
というわけで、私としては、切り口を替えて、「そこを現代向けに語りなおすとしたらどうなるか。ゾラに出来るだけ忠実に」というふうにやってみたいと思います。ただ単に、ゾラに刺激されて、頭が勝手にプロットを立てていった、それをどうしても書き出してみたい、というだけのことなのですが(笑)以下、未読の方にも分かるように、ハコもどきにしています(一部、肩書きを変えているところアリ)


1.劇場内のざわめき、ジャーナリスト、それに絡めてミュファ伯爵、少年ジョルジュで、2分前後で済ませてしまう。ジャーナリストは小ずるいさまを、ミュファ伯爵はジョルジュなんてまったく相手にしていない、それだけ描ければいいと思うので。上流階級の方々は、特別に演技しなくても、ただ座って扇子でも扇いでくだされば、「あ、なるほど」と、分かるような気がしません?


2.次にナナを出します。バックステージ、薄暗く、汚れた廊下。役者仲間はてんで勝手にやっている。その会話のなかで、なんとなく感じられるのは、どうもナナを小馬鹿にしているような雰囲気。どうせコイツはナリだけで、演技なんて何も分かっちゃいないんだ、だけどコイツを立てればウケるから、取り立てて騒いだりはしないけど? という態度が滲み出ているわけですね。それをナナは知っているから、余計に無謀なふるまいをする。貧乏人の娘が家出して体ひとつで生き抜いてきたような人ですから、ナナって人は。ぶつかり転がりながら、いい役をもらったけれど、最初のほうで支配人が言うように、手足の置き場所も知りはしない木偶の棒で、「わしの淫売屋」なんです。居心地が良いはずがない。そして幕が開き、下手な歌を歌い、下手なセリフを言う。ナナはそれでも一生懸命に演っている。その心が観客に伝わって、劇は大成功。しかしナナの気持ちはどうだろうか? 微笑む、その表情に、疲労と苛立ちが、ふっと見えるのではないだろうか。


3.ドンドン! とドアをたたく音。もう、うるさい。ナナは寝床で発狂せんばかり。ゆっくり眠りたいのに眠れない。小間使いのゾエは、ナナの部屋をひっきりなしに出入りして、マダム、○男が来ました、○雄も来ました、○彦もお待ちですと、おしかけて来た、男たちの名を次々と挙げていく。「あぁ、もう聞きたくない。たった一晩でいいから独りで眠りたいものだわ。愚かな男たちの世話なんてウンザリよ。ゾエ、お腹がすいたわ。なにか持ってきて頂戴」なんとナナの家にはお金が無かった。舞台で脚光を浴び、高等娼婦でもあり、パトロンもいるのにお金が無い。もっとも、このパトロンは、左前になりつつあるのだが…。空きっ腹を抱えて台所へ行くと、訪ねて来た伯母たちが、悠長にカードゲームを楽しんでいる。伯母「あら、どうしたの?」ナナ「なんでもないわ」ゾエが追いかけて来る。マダム、どうしましょう、控えの間が男たちでいっぱいです。ナナは現金欲しさに重い腰をあげる。そうして男たちの待つ控えの間へと、入って行った。


4.オーケストラの伴奏。『金髪のヴィナス』第一幕が下りる。ジャーナリストたちは例によってコソコソと何事かをたくらんでいる。殿下と侯爵、そしてミュファ伯爵は、酔いしれた面持ちで、幕の下りた舞台を観客席からうっとりと眺めていた。ジャーナリストの1人フォシュリーは、鼻を蠢かせてニヤけ、「見ろよ、あのマヌケ面を」すっかり骨抜きにされてしまった、ミュファ伯爵の姿。フォシュリー「もう終わりだな。あの人も」別のジャーナリスト「俺たちとは身分が違うよ」フォシュリー「身分だって!? どこにそんなものがあるって言うんだい?」
バックステージ。ナナの楽屋の窓。娼婦のサタンが客引きに、街に立つ姿が見える。派手な服にケバイ化粧。僅かなお金欲しさに身体を売る。それをナナは、楽屋の窓からじっと見ている。お世話係で無表情なジュール小母さんは、眉間にシワを寄せてナナの目線の先、窓の外をのぞき込み、それからナナの衣装替えを淡々と始める。上半身、裸。 ドアが細目に開いて、すぅーっと誰かが入って来た。ナナは驚いて前を隠し、みじかく叫ぶ。不安な表情。あらぬ方角から喜劇役者のフォンタンの顔が、ヌッと現れる。緊張が一気にほぐれてナナはどっと笑った。「なにかご用?」フォンタンは、ふざけて、ナナを笑わせた。「やめて、やめてったら!」笑いが止まらずに、ナナは咳き込むほどだった。フォンタンは支配人から伝言を頼まれて来たのである。これから殿下が挨拶に来ると、だからここを動かぬようにと。ナナはすっかりシラけてしまい、ぞんざいに相槌をうつ。そして無表情なジュール小母さんに従い、着替えの続きをやり始める。フォンタンは部屋を出て行くまえに、「ナナ?」と呼んだ。ナナは鏡にうつる自分を見ていた。フォンタン「そのうち休暇をもらえるさ」ナナは鼻でわらった。フォンタン「なに、カンタンなことだよ。ここに来なけりゃいいンだ」ナナはビクッと身を震わせて、鏡にうつる自分を見、それからフォンタンのほうに顔を向ける。しかしそこに立っていたのは、フォンタンではなく、ミュファ伯爵だった。頬をばら色に染め、ナナを熱く見ている。ナナは神隠しにでも遭ったかのように、そこに立つミュファ伯爵の顔をまじまじと見つめながら、消えたフォンタンのことを考えていた。
「殿下! 殿下!」とドアの向こうで支配人の声がする。「こちらでしたか!」おべっか使いの支配人、殿下、侯爵が、ミュファ伯爵に続いてなだれ込んで来る。上品ぶってはいるが、欲情にかられた雄犬さながらに、鼻の下を伸ばしてナナの裸体を見ているのだった。ナナはたっぷりと間をおいて挨拶をした。しかし着替えの手は休めなかった。窓の下では娼婦のサタンが労働者らしき逞しい男の腕にぶらさがって歩いて行った。ナナは着替えを済ませて念入りに化粧をし始める。侯爵「その昔、君は街角に立っていたそうじゃないか」支配人「根も葉もない噂でございますよ。わたくしどものナナは、そんなはすっぱな」侯爵「(かぶり)古傷は、誰にでもあるものだよ、君。まぁ、気を落とさずに頑張り給え。君の演技は素晴らしかった」支配人、ナナに目配せをする。なんとか答えろと言っている。ナナは微笑み、感謝の言葉を述べる。「だけど、侯爵様?」ナナは静かに続けた。「昔の自分が恋しくなるときも、ありますのよ。こんな馬鹿げた生活に見切りをつけてしまいたい。そんなふうに夢見ることだって…」支配人の咳払い。売女のくせに生意気言うンじゃねぇ! 怒りに燃える支配人の目がそう言っている。ナナはキッとなって支配人を睨み返した。2幕目の始まりの合図が鳴りひびく。ナナは声を荒げてジュール小母さんを急かした。支配人は場をとりつくろい、殿下たちを部屋の外へと連れ出そうとしたが、誰もそれに従わなかった。殿下も侯爵も、そしてミュファ伯爵も、ナナの美しさに見惚れていた。ナナと息を合わせるかのようにして、ひっそりとそこに佇んでいた。侯爵「昔の生活は、マトモだとでも?」ナナ「ええ、そうです」殿下「ほう、それはどうして」ナナ「こう見えても、私」支配人の咳払い。ナナ「――自由でした」侯爵「貧しい売春婦でも?」ナナ「ええ、そうです」殿下「君、自分を安売りしてはいけない」侯爵「そうですとも。ナナ、君には才能がある。良い暮らしをするだけの価値があるのだよ。小汚い売春婦の頃を懐かしんでいてはいけない。きっと君にもきちんとした身請け人さえいえれば…」殿下、あからさまに不快な表情。侯爵は言い過ぎたと思い、発言をごまかすために、さっきから黙りこくっているミュファ伯爵へと視線を向ける。ミュファ伯爵は、とろんとした目で、ただナナを見つめていた。
ナナは、この雄犬どもを、しんから軽蔑した。そして一刻も早く仕事を片付けてしまいたいと思った。どうがんばっても休暇をもらえそうもない。だったらフォンタンの言うように「休んでしまう」しかない。身支度を終えて楽屋を出るとき、ナナはもう決心していた。


5.左前になりつつあるナナのパトロンを説き伏せて、無いお金を借金まで背負わせて、ナナは郊外に感じのよいお屋敷を買った。それがあまりにも性急すぎたので、パトロンは「無理だ」と言いそうになったが、ナナを手放したくない一心で駆けずり回ったのである。
ナナはすぐさまお屋敷へと向かった。自分を小馬鹿にしている芝居仲間たちへのあてつけもあって、ナナは彼らを招待する。『金髪のヴィナス』が終わったら遊びにおいで! 劇場では、ナナが消えたので、大騒ぎである。急きょ代役を立てて芝居は続けられた。支配人の困り果てた顔を想像しながら、ナナはくすくすと笑い、郊外のお屋敷のなかを晴々とした心持で歩きまわった。野菜や果物を植えている畑や、緑の多い景色にかこまれていると、ナナはしだいに息を吹きかえしていった。まるで小汚い街を徘徊しては客を待ち、僅かなお金欲しさに身を捧げていた、あの愚かで自由な日々がまた戻って来たかのようであった。ナナは子どものようにはしゃいだ。その噂はたちまちにして広まった。その近くのお屋敷では上流階級の人々が休息し、殿下や侯爵、伯爵たちの姿もあった。


きりがないのでもう止めます(笑)
ともかく、ゾラは、決して批評家の目で登場人物たちを見ていません。
ナナは愚かで強欲で、無智で浪費家なふるまいをしますが、その芽は誰の内にも宿る、時代に関係なく見受けられる、人間の本性に根ざした、それこそ文学やその他の芸術が取り扱うのに相応しい題材であるように思います。「私」にこだわり、こだわり過ぎて、今では卑小な「私」ばかりが表現されてゆき、しかも学校教育の弊害だと推測できるような、「やさしい道徳家」ばかりです。そうして文学や芸術は死んでいくのだと思います。
ゾラは何も難しいことは書いていませんでした。私にも読めました。マイ・ブームはゾラです、今頃ですけど、恥ずかしながら。


※ゾラの他の記事
『居酒屋』
『ムーレ神父のあやまち』


追記:『プラッサンの征服』は邦訳されてない!? ネットで検索しましたら、私訳サイト発見(こちらのサイト様です)ゾラについて、まんべんなく理解できる♪


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