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ピエール・ルイス 『女と人形』

どう言えばいいのでしょう? お察しどおり今度もまた私はなぶり者にされ弄ばれたのです。この娘が女の中でも一番質(たち)の悪い女だということは、彼女のさまざまの惨酷な手管が度を越していることは、すでにお話ししたとおりです。でも今のところまだ君は彼女を知らないも同然です。これから私の話をお聞きになって、場面を重ねるうちに、コンチャ・ペレスという女の正体がはっきりしてくるでしょう。
こんなふうに、身を委(まか)せるつもりで、私のところへやって来たのだ、と彼女は自分の口から言いました。彼女の愛の言葉、約束は、お聞きのとおりです。土壇場の瞬間まで彼女は、はじめて快楽に触れる恋する処女のような、まるで夫に身をまかせる若妻のような振りを通しました。もちろん、まったくうぶというのではないが、緊張して固くなっている新妻のたとえです。
さて、普段家にいるときも、この情知らずの女は粗い布を裁ってこしらえた下穿き(したばき)をはいておりました。牛の角をもってしても引き裂けないような固い頑丈な質のもので、とても手に負えない込み入った頑丈な紐で帯(バンド)と太腿に結びつけられています。気も狂わんばかりの情熱の真只中に私が見出したものは、なんとこれでした。いっぽう悪党女はいけしゃあしゃあとこう言いわけするのです。
「神様がお許しになるところまでは乱れてもかまわないけど、男の人がお望みのところまでは駄目よ!」(116p~)


※『女と人形』/ピエール・ルイス(生田耕作訳・晶文社)より



この本の巻末エッセイ(中条省平さん)によれば、「『女と人形』は、フランス文学者・生田耕作が誕生する最も大きなきっかけ(201p)」になったのだそうです。当時アーサー・シモンズが英訳した挿絵入りの本を見つけ、「こんな面白い読み物があるんだから、フランス語が読めれば他にまだまだ面白いものがあるにちがいない。よし、フランス語をやってやれと(上同)」、そう決意したのだそうです。
その生田先生を魅了した『女と人形』、映画化数篇、翻訳も数編、ピエール・ルイスの生没は1870-1925ですから、じつに息の長い物語だといえるでしょう。たいていの古典はリニューアル後でも、どこか古典臭(という言葉はないです 笑)ただよっていますが、こちらは現役でイケます、面白いです。ギリシャ・ローマの古典に通じていた、というのがミソじゃない? 話の作りは単純ながら、その単純さに普遍性があると思いました。


話はこうです。
A男が悪女にほだされて、落ちあう約束をする。
A男は知人のB男にそのことを言う。
じつはその悪女、B男の昔の女だった。
B男は、A男に忠告。私は昔、こんな手ひどいめにあった。あなたもきっと同じ思いをする。だから悪女と会うのはやめなさいと(この部分がいちばん長いです)
A男、悪女に会いにいく(やっぱり!)


とてもシンプルです。
ところが読ませます。ちっとも厭きなかった。このB男の(ドン・マテオ・ディアス。スペイン人)自虐的でユニークな語り口にのせられて最終章まで一気に読みました。途中でさまざまなパターンを考えながら。
マテオの告白は本当なのか。なぜこんなにも饒舌に語るのか。それから悪女さん、その行為の理由は? 背景は? etc...
とくに悪女さんの性癖については、ちょっとカワイイなと、思いました。ノーマルでコレをやったら読者ぜんぶを敵にまわしてしまうのじゃないでしょうか。悪女さんは本当にヒドいことをするけれど、その理由として、あの奇妙な性癖をもってくるところに、ひとすじの救いを残しているように思いました。



【ご紹介した本】
女と人形
ピエール ルイス 生田 耕作

4794923120

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