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『退行する日々』 桑井朋子

 1夢
その夢は、診察室へ入ったところからはじまりました。
するとそこに、二十年前に診てもらった医者がまだあの頃のピテカントロプスのままでいましたので、わたしはびっくりしました。
人類はアメーバーから何十億年もかかって進化してきたのですが、個々の人の体というものは、それと同じ過程をへて成長し、退化するときには今度はその過程を逆にたどっていく、というではありませんか。それならば、あのころ石器時代のピテカントロプスあたりまで退化していた医者は、今では当然チンパンジーぐらいにはなっていなければならないはずです。…(文学界12月号より)

第101回文学界新人賞の、辻原登奨励参考作となった、桑井朋子さんの小説です。最初の出だし、少しだけ抜き出したけど、この先を読みたいと思わない? 私は「面白そう~!」と思ったヨ。で、じっさい面白かった。 区切りごとの最後に付けられた、オモシロ哀し俳句も妙な味わいで良いと思いましたし、なんともナンセンスな筋立てながら、読後感は逆に現実を感じてしまった。よくよく見ますと、この方、桑井さん、1932年生れの73歳。え?? 73歳?? ウソだろー、もっと若いだろー。と思ったけど、視野がすご~く広く感じたので、年の功ってやっぱりあるかもしれないと。
もう一方の、新人賞受賞作。こちらも少し抜き出してみます。

平積みされた書籍の帯をチェックするとき、僕の目は純粋な機械、正確無比な装置。細かい網目に引っ掛かるだけの価値を持った言葉が意識の俎上に残り、検討のテーブルに並べられる。それらをひとつずつ吟味して、役に立ちそうな言い回しを吟味するのが、ここ一年ほどの習慣だ。
「いまどき、まっとうな青春小説」というのが、その日、ただひとつ釣れた文章だった。…(文学界12月号より)

ここに出てきた「いまどき、まっとうな青春小説」が、この小説の鍵なのか(?)ぐるぐるとこの先何度も出てくる、のですが、「いまどき、まっとうな青春小説」というものに、まったく反応しない私の感受性。ゆえにどうでもいいことの、くり返し。なんと申しましょうか、この小説にかぎらず、あっちもこっちも薄っぺらい現実の焼き直しで、午後2時ぐらいに始まる草野サンのテレビのほうが、まだしも面白味があって…。報道自粛すると申し合わせておきながら、嗅ぎまわるのを止めないリポーターさんたちの、半土方灼けしたあの顔のほうが、よっぽどリアルに感じてしまう。現実の半歩うしろ、どころか3歩以上も後退している。「あたしの生活は…」とみんな始めてしまうのは、なぜ? もっと自由に書いていいはずなのに、ぬるく弛んだなかで、フシギと硬直しているかのよう。もっとオゾマシイものじゃないのかなぁ、現実って。ものわかり良く、こじんまりと、できれば良い人で、生きていきたいのはやまやまだけど、そこからついはみ出してしまうのが、リアルってやつじゃないのかなぁ、とオバサンは思うのですけど、どうでしょうか。

選評を読みますと、『退行する日々』は、「……」ですが、「あたしの生活は」小説に、飽きあきしちゃってたので、よけいに面白く読めました。桑井さんの次の作品を、ぜひ読みたいです。

『腹中花』/桑井朋子の記事

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