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ダムタイプ/古橋悌二を知っている?

  • 2006-06-17
  • 評論、エッセイ、他
うしろから新聞を読む、いつものこと。
はしっこの記事は「村上ファンド通産同期官僚ら投資」、そのとなりは「予防接種と因果関係-B型肝炎訴訟最高裁判決」…、騒がしく活字がおどるトップ記事へと向かい、ぺらぺらの新聞紙をめくる、めくる、めくる。なにが起こっても平常心。ひとつも顔色が変わっていない。どうやらそのことにすら気づいてはいないようだ、しょせん私の知ったことではない。

その途中で目に止まった印象的な写真が3枚。
いかにも“舞台”というライティング(小さくてよく見えなかった)。鼻の穴に豆をつめて観客に飛ばす芸の、あの役者かと見間違えた金髪カツラの口紅どっさり男。神経質に細く削った眉が、まぶたを閉じても意志をあらわしている、ケバイ女、その頭のうえにぽっかりと浮かぶ文字“LOVE SONG”。

男は白いハイヒールを手にはめて四つんばいになって踊るらしい。
なにをしているの? と問われれば、「1人でタンゴ踊ってるの」と答えるらしい。耳が不自由なのか!? 背中には文字が。日本人、男、ホモセクシュアル、HIV+、その文字は尋ねる男の背中にも。やがて3人目の男が登場し、「僕は男で、黒人でアメリカ人でホモセクシュアルだけど。How are you?」

しょせん私の知ったことではないのだ。つねに世界は外がわにある。日々さまざまな人々が、どこかで生きている、越えていけるものは限られている。前衛的な舞台は理屈のうえに成り立ち、陶酔と弛緩のあいだを行き来し、仲間内だけで盛り上がるような、ある種の差別を感じてしまうものだが、しかしこれは違うようだ。
古橋悌二は魅力にあふれているようだ。
最後の上演から10年もの時間が経過したらしく、「S/N」は伝説だと記事には書かれていた。

「How are you?」

10年後に、そう問われる。
私は古橋悌二を知らなかった。

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